鏡をのぞいた瞬間、背筋がひやっとした
ガラスの表面に、自分の顔が映っていた。
のぞき込むと、見慣れた顔のはずなのに、どこか違う。目線が合った瞬間、背筋がひやっとした。映った自分が、自分じゃないような感覚。見てはいけないものを見てしまった気がして、目を覚ましたあとも、しばらく動悸が残っていた。
夢の中で鏡を見てはいけない、という話を聞いたことがある人は多い。
なんとなく不吉、見たら良くないことが起きる。そんな言い伝えが、ぼんやり広まっている。でも、その理由をきちんと知る人は少ない。結論から逃げずに言うと、これは古い言い伝えに由来するもので、鏡そのものが呪いを持つわけではない。夢占いでは、鏡を見る夢はむしろ大切なメッセージを運んでくる。今のあなたが、自分自身とどう向き合っているか。それが、あの一枚の鏡に映し出される。
なぜ「鏡を見てはいけない」と言われるのか
この言い伝えには、ふたつの根っこがある。
ひとつは、鏡が別の世界への入り口とされてきたこと。古くから、鏡はあの世とこの世の境界を映すものとされ、夢の中で鏡をのぞくのは、見えない世界に触れる行為と考えられてきた。
もうひとつは、鏡が映すのが本当の自分だということ。夢の中の鏡は、普段は見ないようにしている内面や、隠れた自分の姿を映すことがある。それを見るのが怖い、見たくない。その気持ちが、見てはいけないという言い伝えになった。
鏡が夢で象徴するもの
鏡は、自分を映すものだ。
メガネが外の世界の見え方を変えるなら、鏡は自分自身を映し出す。この性質から、鏡の夢は、自己イメージや、自分との向き合い方、心の内側の状態を象徴する。今の自分をどう見ているか、自分を受け入れられているか。それが、鏡に映る姿として現れる。
はっきり映ったか、ゆがんでいたか、別人だったか。その様子によって、メッセージの意味が大きく変わってくる。
言い伝えの正体・鏡があの世とつながる理由
鏡は古くから、別の世界への入り口だった
ここで、興味深い話を。
世界の多くの文化で、鏡は別の世界への入り口とされてきた。人が亡くなったとき、家じゅうの鏡を布で覆う風習が、各地に残っている。魂が鏡に閉じ込められないように、あるいは、あちらから何かが入ってこないように。鏡は、あちらとこちらをつなぐ、不思議な境界だと考えられてきた。
日本でも、鏡は神聖なものだ。三種の神器のひとつ、八咫鏡は、神様が宿る依り代とされ、伊勢神宮に祀られている。神前に置かれた鏡は、参る人の本当の心を映すものとされてきた。
これは夢の読み方に、深みをくれる。鏡の夢を見るのは、見える世界と見えない世界が、あなたの中で触れ合っているからかもしれない。鏡が映すのは、表面の顔だけじゃない。その奥にある、本当の心まで映している。
合わせ鏡にまつわる、ぞっとする話
鏡の言い伝えで、特に有名なのが合わせ鏡だ。
(…子どものころ、これを聞いてトイレが怖くなった人、いるはず)
二枚の鏡を向かい合わせると、その中に、鏡像が無限に続くトンネルができる。古い言い伝えでは、真夜中に合わせ鏡をのぞくと、自分の未来の姿が見えるとか、よくないものを呼び寄せるとか言われてきた。
なぜ、こんな話が生まれたのか。無限に続く鏡の奥は、どこまでも深くて、底が見えない。その果てに、何があるのかわからない。人は、見通せないものに恐れを抱く。鏡の奥のあの暗さが、別世界への入り口を連想させた。夢の中の鏡が怖いのも、同じ理由なのかもしれない。
夢占いが教える、鏡を見た夢の本当の意味
はっきり自分が映る夢
くっきりと、自分の姿が映る夢。
これは吉夢だ。自分を正しく理解できている、自己を受け入れられている、心が安定しているサイン。映った自分を見て、落ち着いていられたなら、あなたは今、自分自身としっかり向き合えている。
鏡の中の自分が、いい表情をしていた夢なら、なおいい。自信や、前向きなエネルギーが満ちている時期だ。怖がる必要は、まったくない。
顔がゆがむ・別人が映る夢
鏡をのぞくと、顔がゆがんでいたり、知らない人が映っていたりする夢。
(…これが、一番ぞわっとするやつ)
これは、自己イメージの混乱や、向き合えていない自分の一面を映すことがある。なりたい自分と現実の自分にズレがある、自分のことがわからなくなっている。あるいは、普段は見ないようにしている、自分の影の部分が現れているのかもしれない。
怖い夢に思えるけれど、これは呪いじゃない。気づいていない自分に気づくチャンスだ。鏡が見せた別人は、あなたが向き合うべき、もう一人の自分だ。
鏡が割れる夢
パリン、と鏡が割れる夢。
これは、自己イメージの変化を示すことが多い。古い自分が壊れて、新しい自分に変わろうとしている。割れる音に動揺したなら、その変化に、まだ心が追いついていないのかもしれない。
ただ、割れた鏡は、古い殻が砕けるサインでもある。これまでの自分から脱皮する、転換の前触れとして読めることもある。
潜在意識が鏡を見せる理由
あなたは、自分の本当の顔を見たことがない
ここで、ちょっと不思議な話を。
実は、人は自分の本当の顔を、見たことがない。鏡に映る顔は、左右が反転している。写真で見る自分の顔に違和感を覚えるのは、見慣れた鏡像とは逆の、本来の顔だからだ。つまりあなたは、他人が見ているあなたより、反転したあなたのほうに、ずっと慣れ親しんでいる。
自分の顔さえ、本当のところは知らない。
これは夢の読み方に、面白い光を当てる。鏡に映る自分は、本当の自分とは少しずれている。そのズレが、夢の中では、はっきりした形で現れる。ゆがんだ顔、別人の顔。それは、自分でも気づいていない、本当のあなたの一面かもしれない。潜在聴は識が鏡を見せるのは、その知らない自分と、向き合うときが来ているからだ。
鏡は、向き合うべき自分を映す
なぜ夢は、鏡という形を選ぶのか。
写真でも、他人の目でもなく、鏡。これには意味がある。鏡は、ごまかしがきかない。そこに映るのは、飾らない、ありのままの自分だ。だからこそ、見るのが怖いこともある。
でも、鏡の夢は、あなたを罰するために現れるわけじゃない。見てはいけない、と恐れる必要はない。鏡は、あなた自身を映す窓だ。怖い顔が映ったなら、それは向き合うべき何かがあるという、潜在意識からの正直なメッセージなのだ。
実体験・体験談
別人が映る夢を見た後の話
知人の経験を紹介する。
彼女は、鏡をのぞくと知らない女性が映っている夢を見て、朝からぞっとしていた。何か悪いことの前触れじゃないか、と怖くなったという。
(…でも、よくよく考えたら、心当たりがあったらしい)
当時、彼女は周りに合わせてばかりで、本当の自分を押し殺していた。鏡の中の別人は、自分らしさを失った姿だったんだと、後で気づいた。少しずつ、自分の気持ちに正直になっていったら、あの夢は来なくなった。映っていた他人は、見失っていた自分自身だった。怖い夢が、自分を取り戻すきっかけになった。
鏡を避けていた夢が映していたもの
自分の話も書く。
ある時期、夢の中で、鏡を見るのを必死に避ける夢を、繰り返し見た。鏡が目の前にあるのに、顔を背けてしまう。見たくない、という気持ちが強かった。起きると、胸のあたりがもやもやしていた。
当時、自分の現状から、目をそらし続けていた。うまくいっていないことを、認めたくなかった。鏡を避ける夢は、その逃げている気持ちを、そのまま映していた。
勇気を出して、自分の状態にちゃんと向き合った。怖がっていたわりに、見てしまえば、案外受け止められた。それを境に、鏡を避ける夢は来なくなった。見たくなかったのは鏡じゃなく、ありのままの自分のほうだった。
鏡の夢が伝えるメッセージの受け取り方
鏡を見る夢を見た翌朝、思い出してほしいことがある。
はっきり映ったか、ゆがんでいたか。別人だったか、鏡が割れたか。
くっきり自分が映る夢なら、自己を受け入れられているサインだ。怖がる必要はまったくない。今の自分に、自信を持っていい時期だ。
ゆがんだ顔、別人の夢なら、向き合えていない自分の一面があるサイン。怖い夢に見えても、それは呪いじゃない。気づいていない自分に気づくチャンスだ。
鏡が割れる夢なら、自己イメージが変わる転換の前触れ。古い自分から、脱皮しようとしている。
夢の中で鏡を見てはいけない、という言い伝えは、鏡があの世とつながり、本当の自分を映すものとされてきたことから生まれた。でも、鏡そのものが怖いわけじゃない。鏡は、ありのままのあなたを映す窓だ。あなたは、自分の本当の顔さえ知らない。だからこそ、鏡の夢は、知らない自分と出会わせてくれる。恐れて目を背けるより、そこに映ったものを、そっと受け止めてみればいい。

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